不動産投資3つの利回り、表面利回り・実質利回り・本当の利回り

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不動産投資の利回りは、物件購入の決め手となる最重要な指標の一つです。

多くの投資家は、実質利回りまでしか見ずに物件購入してから、後になって思ったよりも手元にお金が残らないと感じる人が多いです。

物件を買う前に、確認すべき利回りは、

  • ・表面利回り
  • ・実質利回り
  • ・本当の利回り

この3つです。
それぞれ役割があって、それぞれ大切です。

表面利回り
表面利回りは、簡単に分かるのが最大の持ち味で、多くの物件の初期検討段階で、物件間の比較する際に重宝します。

実質利回り

実質利回りは、検討が進み、不動産屋や銀行と色々な条件を詰め始めたころに計算します。それ以前は、気になる物件については、計算に必要な要素でまだわからない数字は仮数字を入れておおよその数字を掴んでおくとよいでしょう。

実質利回りをキチンと計算するには、不動産屋や銀行に聞かないと分からない数字も多く、正直手間が掛かりますが、この実質利回りが分かれば、不動産の持つ収益性がはっきりします。この実質利回りが出た段階で購入するか見送るかを決める人が多いです。

本当の利回り

本当の利回りというのは、僕が勝手に指標としているものです。
一般的には、税引き後キャッシュフローというものに近いのかもしれません。

計算するのは大変です。自分や自社の税金への影響や借入金返済の状況も含めた検討をします。

実は、これが一番大事な指標として、僕は捉えています。

この「本当の利回り」が分かれば、この不動産を買ったら未来はどうなるか、リアルに表してくれます。

不動産投資は税金の影響をかなり受けます。
例えば、上場企業の部長とニートが、年間家賃100万の投資用ワンルームを買った場合に掛かってくる税金は、部長が40万円、ニートが10万円と全然違ってきます。
100万の年間家賃から40万も税金引かれたら、投資のうまみはないですよね。

実質利回りの計算では見えてこない、非常に大きなインパクトがあるのが税金です。

税金を無視して算出された計算結果をもとに投資するのは、真っ暗な山道をヘッドライトを付けずに疾走するようなものです。すごい怖いことだと思います。

このページでは、僕が実際に物件購入前に、必ずチェックするやり方を公開しています。

3つの利回りはそれぞれ特徴とその役割があります。


まずは表面利回りで目星をつける

ネット上にある情報にも、表面利回りは載っていたり、簡単に計算できたりしますので、まずは、たくさんある物件の絞り込みに、この表面利回りを使うのが便利です。

計算式は、

表面利回り=(月間賃料+月間公益費)×12/消費税込み物件価格

  • 表面利回りの特徴と使い方
  • ・計算が簡単
  • ・目星にはなる
  • ・物件の絞り込み

 


次に実質利回りで検討します

表面利回りのスクリーニングによって候補として残った物件は、より現実的な指標である実質利回りを計算します。

実質利回りの計算では、不動産取得税や手数料を加味するだけなので物件価格に対して一定割合でかかるものが多く、物件ごとに大きな差は出ません。乱暴な言い方をすれば、どの物件も表面利回りから1%減じたくらいの値になります。

ただ、1つだけ物件によって大きく違うのが、預かり保証金です。
この数字のインパクトはかなり大きく、物件によって全くことなるので、この部分には注目です。

詳しい計算式は、

まず投資した合計金額を計算します。

投資合計額 = 消費税込み物件価格
      + 仲介手数料他
      + 登記費用
      - 預かり保証金
      + リフォーム費
      + 不動産取得税

これが分母になります。

ここで意見が分かれるのが、「預かり保証金を差し引く」かです。
関東では、テナントが入ったままの物件を買う場合、各テナントが大家に預けた保証金を引き継ぐことができます。
保証金が500万円入っていれば、物件購入時に売主から500万円を渡されるわけです。
ただし保証金ですから、テナント退去時には、これはテナントに返さなくてはなりません。

返さなくてはいけないお金なのですが、次のテナントが決まれば、ほぼ同額の保証金を入れてもらうことは可能なので、空室期間なく決まるような物件だと保証金の分、安くなったとも取れます。

とにかくローン返済期間をしのげば不動産投資のキャッシュフローは安定圏に入りますので、キャッシュフローが厳しいローン期間中に保証金とはいえ現金を預かれるのはとても魅力的です。

やはり預かり保証金の多寡は気になるところです。多いに越したことありません。
僕の場合は、この保証金の額は、もらったものと考えて計算式に入れてしまい投資合計から引き算します。

「そんな返さなきゃいけないお金をもらったことにするなんて怖い」と思われる方は、預かり保証金の金額は無視して計算すればいいと思います。

次に年間の純収益を計算します。

年間純収益=年間賃料+年間公益費

これが分子になります。

これら計算に使う値は、物件を売り出している不動産屋で確認できるものは教えてもらい、不明なものが残ったら、他の物件の値を参考に仮の値を入れて計算します。
すべて正確な値を揃えるのは時間的に難しい場合が多いので、ある程度は大雑把に計算してあたりをつけるくらいで大丈夫です。

実質利回り=年間純収益/投資合計額 実質利回りは、諸費用など実際にかかる費用を差し引いて計算したもので、かなり現実に近づいた数字になります。
この数字をみて購入するかどうか判断する人も多いです。

  • ・検討を進め不動産屋とやり取りを始めないと計算に必要な数字が手に入らないのでかなり本気で購入したい物件のみ計算
  • ・この数字が良ければ買いの最有力候補

空室率についての考え方

ここで慎重な人ならこう思うのではないでしょうか?
「年間純収益に空室率はかけるべきでは」と。
ごもっともな意見だと思います。

でも、
僕は、空室率は掛けませんでした。

購入前から空室が予想できてしまうような物件は鼻から買わないようにすべきです。

少々、精神論的になってしまいますが、空室にならないようにするための手はありますので、空室率をかけて物件の本来の魅力を減じるよりも、満室で行く気持ちで購入前の検討をしたほうが有益と考えています。

 


買うか買わないかは、本当の利回りを計算してから決めます。

本当の利回りとは、

実質利回りに対して、さらに、

借入金の返済額によるキャッシュアウトと減価償却による節税効果を加味した計算をします。

計算式は、

分母は、実質利回りの計算で使った投資合計額 と同じです。

分子は、実質利回りのときの 実質利回り に対して以下の計算をします。

本当の利益=年間純収益-年間銀行返済額-(年間純収益×税率)+建物価格/残存償却年数×税率※税率は、法人なら法人税の実効税率、個人なら所得税と住民税の実行税率 個人の場合、不動産の収益を加えることで、累進課税が進んでしまい税率も上がる可能性があります。
 

この式の意味は、
不動産からの収益から、
実際にお金が出ていく銀行返済額を引き、
さらに不動産の収益にかかる税金を引き、
建物の減価償却で得られる節税効果を足して、
本当の利益を計算しています。

厳密には、銀行借り入れの金利が経費になるので、正しくはその分も計算すべきですが、
利息は毎月変動するため計算がさらに複雑になってしまいます。
金利による税の軽減は無視していますが、これにより、よりシビアな数字がでますので、より破綻しにくいシミュレーションが可能になります。

本当の利回り=年間本当の利益/投資合計額

これが本当にリアルな収支予測になります。
これらの計算式をエクセルに設定し、
金利や借入期間などを変動させ、本当の利益への影響を把握したうえで
銀行交渉などに利用します。

僕は、物件購入前の最終確認として、この数字を重視して、買うか買わないかの判断をしています。

あくまでも僕流のやり方です。
一般的には、税理士と相談して、税引後キャッシュフローのシミュレーションをお願いすれば、ほぼ同じような検証ができると思います。

税金と借入金返済のキャッシュアウトの影響は、かなりでかいので物件購入前から試算しておくことはよいともいます。


本当の利回りが有効な期間

本当の利回りの計算には、銀行返済と減価償却の影響を盛り込んでいますから、
銀行返済が完済したり、
減価償却期間が終わると、
本当の利回りは変わってきます。

銀行返済が完済した場合は、劇的に改善するから、特に注意しなくてもよいのですが、減価償却期間が終わった場合は、税金が高くなるので、そこは注意が必要です。

ですので、購入前に計算した本当の利回りが有効な期間とは銀行返済が完済するか、減価償却期間が終わるかどちらか短いほうとなります。

一番いいのは、減価償却期間に合わせてローン期間を設定しておくことです。

こうすると減価償却の節税効果と経費にならない元本返済の負担が打ち消しあって予期せぬ大きな影響を受けなくて済みます。


本当の利回りが厳しかったときの対応

実質利回りがいいのに、本当の利回りを計算するとすごい悪い数字が出る場合があります。

そんな時のどう判断すればいいかですが、

借入を起こして不動産投資する場合、2つのフェーズがあります。

ローンが残っている期間
ローン完済後の期間

この2つの局面に分かれます。

ローンを完済してしまえば、不動産賃貸には目立った経費もありませんので、あまり目くじら立てなくても大丈夫なのですが、ローン返済期間中のキャッシュフローがマイナスにならないように、注意深く検討することが大事です。

本当の利回りの数字が小さいと、ローン返済中の資金繰りは悪くなります。
でも数字がプラスであるなら持ち出しが必要になることはないと予測されています。

本当の利回りが低くなるのは、ローン期間が短いことなどが大きく影響しているのですが、逆にその短い期間をしのぎローンが終われば劇的にキャッシュフローは改善しますので、他の収入が十分あり、その物件がローン期間が過ぎても十分長期的に魅力があると思えば、購入するという判断になることもあります。

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