賃貸物件の「建物の固定資産税」を60年間以上も無駄に払わない

賃貸物件を建て替え、もしくは新築するときに、ぜひ頭の片隅に置いておきたいことがあります。
「建物の固定資産税」を60年間以上も無駄に払わないために建築前にできることがあるということです。

固定資産税に関しては、
役所が勝手に計算してくる賦課課税なので、どうしようもないと最初から興味すらない人が多いと思います。

ただ、これから建物を立て直す場合や、新たに新築する場合には、今後60年以上に渡って払い続ける固定資産税の安くする方法があります。安くするというよりも無駄な税金を課税されないための方法といったほうが近いです。

この方法を使えば、都市計画税も同じように安くすることができます。
「固定資産税および都市計画税」と何度も表記すると読みにくいので、この文中では「固定資産税」と表記しますが「固定資産税および都市計画税」の意味です。

ちなみに、東京23区で建物を建て替えるときに確認した話をもとにしています。
他の地域でもほぼ同じだと思いますが、細かい数字などは変わってくる場合がありますので、市税事務所などに確認してください。

では、早速説明しましょう。

建物の固定資産税は都税事務所が決める

東京23区でのお話しで進めさせてもらいます。
固定資産税は、国ではなく地方の役所がその計算や徴収を担っています。

東京なら都税事務所です。

都税事務所で働かれている事務員の方々は、都庁の方々で、3年程度に一度、全然違う部署から異動してくることが普通です。
都庁に入るにはかなり難しい試験を経ているので、優秀な人たちなのですが、ツギハギだらけで複雑怪奇な固定資産税の計算を全然、畑違いの人が急に行っているので、はっきり理解されていない人もいるようです。

僕は、なんでも分からないことは都税事務所に直接聞いてしまいますが、担当によっては、質問の意味すらよく理解できないような方もいますし、逆に、すごいスムーズに対応いただける人もいます。

ですので、最近は、電話してなにか聞くときは、その部署で一番詳しい人をお願いしますと頼んでから、質問させてもらっています。

建物の固定資産税の決定の仕組み

1)建設完了後、建築会社からの図面や各種資料と現地での内覧で建物の評価額を決定。

2)建物がRC造なのか木造なのかなど構造によって減価償却期間が決まる。

3)減価償却期間を過ぎても最初に決定した建物の価値の20%は永遠に残ると計算されて課税され続ける。

このような流れで、最初に建物の価値が決まってから、
その価値×1.7%が永遠に課税されます。

ただし、建物の価値は減額するものとして計算され、
RC造の場合は、60年で最初の価値の20%にまで減っていきます。
その後は、ずっと20%で計算され続けます。

「あれ、まだ60年なの?」と思われたあなたは、するどいです!

国税での耐用年数は、平成10年度に改正され、
住宅用RC建物は60年から47年、
事務所用は65年から50年に短縮されました。

にもかかわらず、地方税では、旧耐用年数で今でも算定されています。

償却が遅いままにすることで、長期にわたって課税額を高止まりさせておける仕組みですね。

お役所のルールが理不尽だと感じても、それを覆す労力を考えたら、そのルールのもとで、最善の行動をとるようにすべきだというのが僕の考えです。

税金の仕組みは調べれば調べるほど、「なんで?」みたいな理不尽さが詰まっています。いちいちイラついていると体がもちません。
現在のルールのなかで、最善策を探りましょう。

さて、償却が遅いし、60年後も20%も価値が残り、永遠に課税され、
僕が亡くなった後でも、課税され続けるのが固定資産税です。

しかし、一度だけ、
無駄な課税を避けることができるピンポイントがあります。

それは、

  • この建物の固定資産税が決まる新築後の調査のタイミングです。

そうはいっても、固定資産の評価は役所が勝手にやるから手の出しようがないと思っているかもしれませんね。

確かに、評価は役所の方々が行いますが、評価される建物は、こちらが建てますので、無駄に高い評価をさけるような作りにするのが大切です。

建物の固定資産税で最も無駄なのは

建物の固定資産税を調べていて、もっとも無駄だと思ったのは、エアコンなどの耐久消費財も建物の一部として、建物評価に加算され、60年に渡って、ゆっくり減価償却されながら課税され続け、60年以上経っても、2割の価値があるとされて永遠に課税され続けるという話でした。

例えばビルトインエアコン数台で100万円だったとして、これが60年かけて20万円まで減価され、それ以降はずっと20万円の資産として、固定資産税が掛け続けられると、

60年間で約60万円の固定資産税を払う計算になります。
しかもそれで終わりでなく20%となった残価にもずっと固定資産税が掛かり続けるのです。

元の資産の60%もの税額です。

エアコン付けてなくてもエアコンダクトの穴があるだけで、エアコンを設置するものとして、課税されるとも言っていました。

例えば、10年で壊れて取り外したら、どうなるのですか?と質問したところ、関係なく永遠に課税され続けるとのことでした。

壊れて使っていないエアコンの分も、例え僕が亡くなった後でも、永遠に課税され続けるなんて理不尽とは感じましたが、これがルールですから、このルールのなかで最善を探したいと思います。

う~ん。
「泣く子と地頭※には勝てない」ということわざをなぜだか思い出しました。

※鎌倉時代の税務署みたいなもの。

取られる方からしたら理不尽の塊のような固定資産税ですが、新築時だけできる対策もあります。

納税者側が固定資産税に影響を及ぼせる唯一のチャンスですので、以下を参考に、税理士や建築会社や仲介業者などとよく話し合いながら最善の新築計画を練ってください。

色々な税制がこの日本にはありますが、固定資産税は、役所側の都合で最もコントロールしやすい税制です。
現にここ30年ほどの間に、物凄く負担感が増しています。

例えば消費税のように税率をあげるなどの目立った変更をしなくても、評価額を決めるのも役所ですから、あちらの都合で如何様にもなります。
おそらく、これから先も、評価額はどんどん上げていくことでしょう。
こっそりとじわじわと納税者負担が上がってくるサイレントキラーのような税金です。

しかも、固定資産税について関心のある納税者や税理士が極端に少ないのもこの傾向に拍車をかけています。

ですので、このページを見て、ことの重大さに気づいたあなたは、まず、最低でも無駄に固定資産評価が高くなるようなことは避けるようにしたほうがよいです。
何十年もその効果は続きますので。

豪華にし過ぎない

内装などを過剰に豪華にし過ぎないのも固定資産評価を下げるのには一定の効果があります。
ただ、立地がそれほど良くない賃貸物件では、内装に勝負を掛けたいというのは理解できますが、
建物評価を高めずに、入居希望者のウケがいい内装などを研究することが大事だと思います。

いくら固定資産税が安くなっても、入居者が入らなくては本末転倒ですから、このあたりは、バランスよく考えてください。

例えば、スケルトンのデザイナーズオフィスなどは、豪華ではないけど入居者の受けはいいので、おすすめです。

無駄に堅牢にしすぎない

コンクリートが厚くなればなるほど、鉄筋や鉄骨を使えば使うほど、固定資産評価は高くなります。

耐震面で考えると、コンクリート壁は厚く、鉄骨は太く、鉄筋は密にしたいのですが、耐震基準を大幅に超えて堅牢するのは、いたずらに固定資産税を高くするだけです。
ただ、どのくらい堅牢にすると、どのくらい固定資産税が上がるのかを事前に知ることは難しいのが悩みどころです。

ただ、大きな地震も頻発していますし、特に密集した市街の建物を立て直す場合などは、耐震基準は絶対にクリアした建物を建てましょう。当たり前ですよね。

国や都も耐震化を必至になって推奨しているのに、しっかりした建物を建てた人ほど固定資産税負担が永遠に高くなる制度設計って、ちょっと歪だと思いますが、それが現行ルールなので、建築会社と相談しながら、耐震性をクリアした建物を建築するようにしてください。

エアコンなどの設備は可能なかぎり入居者につけてもらう

商業テナントに貸す場合は、スケルトン渡しといって、壁の内装もエアコンも、場合によってはトイレすらない状態で貸すことが一般的です。ですので、当然、テナントが後から付けた設備は建物の評価に加算されることはないので、建物の固定資産税のなかで無駄な部分は省くことができます。

住居用であっても、同じように、入居者が好きなエアコンやお風呂などを設置してもらうケースも増えているようです。
その分、礼金なしとか、なんらかのインセンティブを考える必要はあると思いますが、検討する価値は十分あるものと思います。

 

 

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